病院。
鳴る携帯の電源を切る真。
ベッドの花蓮と話始める。

真

何?話したいことって

花蓮

うん、実は…携帯小説コンクールで大賞獲っちゃいました!

真

そう。おめでとう

花蓮

リアクション薄いなあ。もっと喜べないの?

真

いやうれしいよ。純粋にびっくりし過ぎて驚いてるだけ。すごいなあ、俺にもそんな才能あったらなあ

花蓮

何、本気でヘコんでるの(笑)これは二人で獲ったようなモンなんだよ?だって、殆どがお兄ちゃんの話からネタもらってるから

真

えー、マジで?何だよ、しっかりしてるなあ。俺にも原稿料頂戴よ

花蓮

賞金もらったらね。それでさあ、一つお願いがあるんだけど、実は授賞式が来週なんだ。本人が出席しなくちゃいけないらしいんだけど…

真

…わかった。エスコートね。病院にもあとで外出許可貰って置くから

花蓮

ありがとう。一生に一度の晴れ舞台だから。よろしくね

真

了解。ただ、つっ込ませてもらうとそれは冠婚葬祭の時に言うセリフ。今回は始まりで、これからもっと小説を通して花蓮に素敵な事が待ってるはずだよ

花蓮

ありがとう。今のセリフかっこいいな。次回作に使わせてもらおうかな


医務室。
医師と話している真。

真

というわけで来週、愛花蓮の外出許可を頂きたいのですが

医者

わかりました。ただし、直射日光は極力避けること。30分に一回は吸水と飴玉一個程度でいいので糖分摂取をよろしくお願いします

真

わかりました。ありがとうございます。今週中には肝臓移植手術並びにこれから5年分の入院費、計1000万円を一括で振り込みさせて頂きます

医者

五年分…ですか。肝臓手術は私も賛成ですが、入院費に関しては今まで通り月末払いの方が良いのではないでしょうか?

真

どういう意味ですか?

医者

…はい。率直に申し上げますと、花蓮さんの免疫力の低下が著しく…つまり病気の進行が早まっているのです。正直、5年先まで…

真

5年先まで生きられないっていうんですか?

医者

いえ、断言はできません。全快は無いにしても、今後容態が良くなり、通院程度までに回復する可能性もありえます。ただ、この膠原病・エリテマトーデスに関してはその、長期スパンで治療を計画していくのが非常に難しく…

医師の首根っこを掴んで

真

じゃあ、明日死ぬんですか!?ならこの外出許可も要らないじゃないですか?はっきり言って下さいよ!いい加減にしろよ、もうこっちだって我慢の限界まで来てるんだ!!

マンガ喫茶。
携帯の電源を入れる真。
咲からの何十件もの着信履歴。慌てて掛けなおす。

真

もしもし

咲

真さん、どうして出てくれないの?

真

すみません。
妹の見舞いで病院にいたので電源を切っていました

咲

…そう。私、正直にありのままにすべて話すことってできないでしょうか?

真

すべてって。何をどこまでですか?

咲

すべてです!私が内海さんを殺してしまった事。真さんと計画して金庫からお金を取った事、それと内海さんの死体を…

真

待って下さい。冷静に、落ち着いて考えて下さい。そんなの無理に決まってるでしょう?そんな事しても何の得にもならないですよ

咲

私、もう何も要らないんです。今日もずっとどこかで見ていたんですよ、内海さん。私の事…ずっと見てた

真

咲さん。気持ちはわかります。疲れているんですよ。じきになれます。それまでの辛抱です。とりあえず今は普段通りに毎日をこなしてればいいんです。頃合を見てまた…

咲

見てまた…何が変わるんですか?私に仕事やめろっていうんですか?責任とってくれます?30手前の女を雇ってくれるところなんてそんなに…

真

すいません、僕も疲れていて上手く物事を考えられないんです。とにかく、今日はもう…おやすみなさい


半ば一方的に電話を切る真。
髪をかきむしる咲。

咲

じゃあどうしたらいいっていうのよ!

咲

わかったわよ!謝りに行けばいいんでしょう?

内海の死体を埋めた道を独り歩く咲。
脚に何か当る。
確かめると猫の屍骸であった。
びっくりして仰け反る。

咲

きゃあ!

真

全く知らなかった猫なんで情が沸かなかっただけですよ

ハンカチを手に巻き、猫を掴もうとする。
上手く掴めずゴロンと転がる死体。
大きな目の水晶体が腐って地面にぐにゃりと溶ける。

咲

きゃあーー!



平気なわけない
           平気なわけない
 そんなわけない

     平気なわけない
              平気なわけない

そんなわけない

      平気なわけない

愛が無いからいえる他人事
              本当に他人事

 愛が無い     

きっと私は愛誠に愛されていない

捨てられる

    捨てられる前に何とかしなきゃ

                  その前に

   ああ

ああ

               あああ













私はもうおしまいだ








続く