あいつは誰なの?!

日が落ちてしまった後の遊歩道は、街灯も少なく、あまり明るくはなかった。

静香

これ、何のラケットかしら。
テニスとは違うみたいね。

静香

クリケットだかラクロスだかなんだか?

静香

何のラケットでもいいわ。
変質者を殴るだけだから。

静香

もし、ヤツ……、
義経なら避けるはず。

伝説の英雄なんだから、避けるわよね。

静香

でも、ホントは弱かったのかも?
口先だけは達者だったけど……。

口先だけで平家を倒したって、あるんじゃないか?
めっちゃ弱そうだったもの……。

その場合、このラケットは当たるのではないか?

静香

…………。

静香

でも、何の関係もない変質者にも、
太刀打ちできないかも……。

静香

そうよね。
よく考えたら、私はか弱い女子なのよ。

静香

普通に考えて、これって危ないんじゃないかしら?

いつもいないのか、散歩している人も、マラソンをしている人もいない。


周囲には誰もいなかった……。

ぽつっ

静香

ん?

頬に何かが当たり、空を見上げた。

雨が降ってきた。

雨乞いの技は、未だ健在だったのか?






平安時代は雨が降らないと、なんやかんやと神事があった。

雨を降らそうと白拍子が舞ったこともあった。

あの時は、99人の白拍子が舞っても雨は降らなくて、100人目に私が舞うことになった。

静

チョー緊張なんですけど……。

静

つーかよくもまあ
100人も集めたわよね。

静

てかさ、なんかもう、雨乞いどうでもいいって感じだよね。

静

自分たちが、
どんちゃん騒ぎたいだけだよね?

ため息が出た。

静

いつも通りに舞えばいいか。

静

こんな連中のためじゃなく、
雨が降らずに困っている人たちのために舞おう。

そう覚悟を決めると、緊張も薄まり、舞うことができた。

でも、いつの間にか、何かのためにというのはなくなっていた。

舞いたいから舞う。
ただそれだけだった。

舞い終わると、頬に何かが当たった。

待望の雨が降ってきた。

さすが天下に名だたる
白拍子。

ほんに舞いも
見事であった。

とか言ってたけど、

静

おめーら見てねーだろ?
どんちゃんしてただけじゃん。

降りが強くなると、自分が濡れないように、屋根のあるところへと皆、逃げ出した。

静

雨が降ってほしいなんて、
思ってなかったっぽいな。

雨に打たれながらそう思った。




このことで後白河法皇のはげオヤジの覚えがめでたくなり、ヤツに会うきっかけにもなった。

こんなことができると、やっぱり自分は静御前だったのだという確信を持ってしまう。


……偶然って可能性は高いけど。

静香

空は……
今も昔も
変わらないか……。

静香

んー

静香

帰ろう。

誰もいないんだから、ここにいても仕方がない。

雨も降ってきたことだし……。

…………。

濡れるから……、
帰るか。

静香のことも
心配だし。