家に着いた。
僕も圭も、荷物を置いて財布だけポケットに。
家に入った瞬間、

圭

この部屋もだいぶ、
快の匂いがしてきたね

と、言われた。
僕の匂いってなんだ?
などと哲学的な悩みを抱きつつ、部屋を出る。

圭

どんな小物を買うの?

快

キッチン用品があんまり揃ってないんだ。
百均で揃えようと思ってな

圭

ちゃんとしたお店で揃えればいいのに

快

お前と違って貧乏なのをわかってくれ……

圭

言ってくれたら俺が買うよ

快

そういう問題じゃない

歩いて15分ほどすれば、
ショッピングモールが見えてくる。

映画やボーリング場などの”ほしい”施設がないのは悲しいけど、
百均や家電量販店、ホームセンター、本屋、サイクルショップ等は出揃っている。

快

そろそろ着くな
疲れたか?

圭

全然

快

……そうだろうな

圭は顔がいいだけでなく、
勉強も一人より出来る、
だけでもなく、
運動神経だって抜群だ。

こんな細い身体のどこに、
この運動能力を支える筋肉があるんだろう……。

快

……着いた。ここだ

圭

大きい

ここら一帯では一番大きい施設。
目立つ為、迷うことはないだろう。

自動ドアが開き、一歩踏み込む。

お目当ての百均は三階にあるので、
エレベーターでさっさと向かう。

快

……

圭

……

二人しかいないエレベーター。
特に話す内容もなく沈黙が流れる。

チンッ

二階に着いたことを知らせる音と共に、
扉が開く。
と、そこには。

有希

あっ

快

あっ

圭

……

今日初めて出会った人の中で、
最もインパクトが大きい人と、再会した。

有希

え、えっと……

ドアガシマリマス

有希

あっ乗りますっ!

閉まりかけのドアに飛び乗った彼女、
春野 有希(はるの ゆき)さんは、
恭しく僕らは見る。

快

三階で、平気ですか?

有希

はいっ

こうして、
やや重くなった空気で上がるエレベーターは、
体感時間を果てしないものにした。

そしてその沈黙をなんとか破ろうと思ったのか、
春野さんが口を開いた。

有希

あの……

快

なんでしょう?

有希

お二人は本当に、付き合っているんですか?

快

……

圭

……

……何を言っているんだこの人……。

有希

急にすみませんっ
私、春野有希という者でしてっ
その……

遂に空気を読んだエレベーターがドアを開け、
お目当ての三階へ。

最初にするべきことは、
キッチン用品の購入ではなく、
この人に真実を説明することのようだ。

有希

僭越ながら……
日浦さんに一目惚れを、
してしまいまして……。

……唐突過ぎる告白。
雰囲気もなにもない。
圭は当たり前のようにスルーをした。

僕はエレベーターから一歩踏み出し、
必死に言葉を捻り出す。

快

……
そ、そうですか。

二つ分かったことがある。

この人は恋愛なれをしていないこと。
そして、

快

だってさ、圭

圭

快、早く行こう

僕がわりと、
この人の――春野有希さんの告白に、
ショックを受けていたことだ。

快

あれ、

早いペースで先に歩いていってしまった圭を追いかけ、僕も急いだ。

春野さんはといえば、

有希

ま、待ってくださいっ

完璧なスルーを決め込まれたのにもかかわらず、
大したダメージを受けた様子もなく、
頬を上気させて僕らの後を追いかけてくる。

圭

まくよ

快

えっ、おいちょっと、圭!

有希

待ってくださぁーい!

圭に手を引かれながら、
慣れないショッピングモールを早歩き。
後ろからは今日知り合ったばかりの女子。

軽く買い物をするだけのつもりだったのに……
どうしてこうなった……