楓が、留奈の為にシークレットライブを開催したいと言い出した。

今日は楓とひかりを中心に、その企画会議をする…らしいが。

楓

それでは、かいぎをはじめます

ひかり

うん! まず話し合った方がいいのは、ライブの場所からかな――

留奈

ねえ、ひかり話が――

ひかり

わー! わー! わーー! わーー!!!

留奈

って、なに、ライブ? 仕事の話なら留奈も混ぜなさい!

ひかり

う、ううん、全然違うよ、チガウンダヨー! 用件はなにかなー、留奈ちゃん! 部屋の外で話そっか!

楓

……ひかりさん、忙しそうです

……いつも一緒にいる留奈を引き離しながら相談というのも、なかなか大変そうな話だ。


高花ひかりは、最近いつも忙しそうにしている。

*  *  *

……そして、数時間後。

楓

ここなら、どうでしょうか

ひかり

うんうん! ここなら……留奈ちゃんにも見つからないし……!

改めての会議は、楓の実家にあたるレストランで行われることに。

近くで会ったつかさと八葉、唯も、よく分かってないまま仲間に加えられている。

つかさ

これは、一体なんの集まりなんでしょうか? なんだかワクワクします!

唯

……結局、何の集まり…?

八葉

ひ、ひかりさん…眼鏡……!

恐らく勉強関係の記憶だろうか、八葉は、ひかりの眼鏡姿にトラウマがあるらしい。唯の後ろに隠れてしまっている。

プロデューサー

それは――

ひかり

……うん、うん

僕が説明している間、当のひかりは、企画の概要をメモするスケッチブックを見つめてうなずきながら、眼鏡をくいっと指で上げている。

いつものひかりとは違う、ストイックな優等生としての眼差しが垣間見える。

ひかり

ねえ。具体的に、かえちゃんはどういうライブをしたいんだろう?

ひかり

ちょっと見せてみてくれるかな?

楓

…どうぞ、かんがえてきました

アイデアを自分から晒すのは、さすがの楓も恥ずかしいのか、うつむき気味で、少しもじもじと身をよじらせていた。

ひかりに手書きの資料を読ませながら、語る。

楓

まず、だれかじむしょの人が登場して、ぬいぐるみに話しかけて、にんぎょう劇をやります

言いながら、楓は身振り手振りで劇をはじめた。

楓

しろひぐまくん。しろひぐくまくん。今日はなんのひか、しっていますか?

楓

えー、わからないなー。なんのひ?

セリフの話し手が変わる度に、ぴょこん、ぴょこん。と飛び上がって、立ち位置を入れ替える。

楓

じつはきょうは、るなさんの、たんじょうびなんだよ? にこにこ

ひかり

アイデアがすごくかわいい! あと説明の仕方も!

唯

(こくこくっ!)

唯が真剣な顔で首を縦にふっていた。

楓

るなさんには、プレゼントがあるんだよ? と、しろひぐまさんがおおきな箱をだします

楓

そのなかから、わたしがとうじょうして、いいます

楓

ちゃらーん

つかさ

つまり桃太郎ですね!

楓

ちがいます

ひかり

かえちゃんの入ったプレゼント箱……! 私もそのプレゼントほしいよぉ!!

楓

だめです

ひかり

……あ、で、でもね!

ひかりがアイデアに対して何かを言いそうになっていた。

厳しいことは、まずは僕から言った方がいい。

わざわざチームメイトの彼女に、そんな役目を負わせたくはない。

プロデューサー

お客が留奈だけとなると、いまいち盛り上がりにも欠けるのかもしれないね

プロデューサー

もっとサプライズ的にすればどうだろう?

八葉

留奈さんのお誕生日パーティー中に、いきなりライブをはじめちゃう、とかですか……?

つかさ

わぁ……! それはとっても楽しそうですね!

ひかり

でもそれだと、パーティーの余興っぽいかもね

楓

……そうですね

楓

できれば、留奈さんをよびだして、いつものライブみたいにしたいです

ひかり

資料にはこのお店を使うって書いてあるけど、許可はとってある?

楓

それは、これからです

やはりひかりの発言に、いつもより切れ味がある。

ひかりは、いつも無遠慮に人にすり寄っているようでいて、ちゃんと相手との関係が壊れないよう線引きに配慮している子だ。

何かしら無茶なことを言うときだって、人を傷つけるようなことは絶対に言わないはず……だが。

ひかり

衣装とか、音響とか、選曲も決めないとね

ひかり

持ち歌の振り付けは留奈ちゃんありきで構成されてるし、少し変える必要もあるとおもう

ひかり

それも、練習する時間もあまりないから、あんまり負担にならない範囲で

楓

……はい

プロデューサー

ひかり、気負いすぎじゃないかな

プロデューサー

留奈はきっと、楓とひかりが歌って踊ってくれたらだけでも喜んでくれる。そのことは、忘れないようにしよう

こんなにピリピリとしたひかりと楓を見たのは初めてだ。

楓もひかりの発言をかみ砕き切れてないようだったから、思わず、強めにフォローを入れてしまった。

しかし、ひかりどころか楓まで強く首を振ってくる。

楓

それでは、だめです

ひかり

うん。だって、留奈ちゃんが見たいのはそんなのじゃないと思うんだ

ひかり

留奈ちゃんが一番喜んでくれるのは――

ひかり

私たちの、アイドルとしてのライブ

正直、不意を突かれた。

GARNET PARTYとしての活動で、留奈に触発されて、ひかりと楓もそれだけのプロ意識が芽生えてきたんだ。

つかさ

そういうことであれば! わたくし、たくさん裏方のお手伝いをいたしますっ

唯

うん、私にできることであれば、喜んで

八葉

私も、裏方できます! 黒子とかやるの……得意な気がします!!

ひかり

てっへへ、ありがと、つかさちゃん、唯ちゃん、八葉ちゃんっ

楓

つづき、かんがえましょう

なんだかんだ言って、楓と企画を考えているひかりはとても幸せそうである。

そうして八葉や唯、つかさもまじって、五人でワイワイとライブの内容を考えていた。

ひかり

んーっ! ふはぁ、少し、外で休憩してくるね!

その輪から一人離れて。

眼鏡を外して伸びをしたひかりが、席を立つ。

プロデューサー

ひかり……? どうしたのかな? 疲れた?

ひかり

う、ううん! 大丈夫だよ、なんでもないから!

明らかに影のある様子が気になって、ひかりの後ろ姿を視線で追いかけてしまう。

彼女は、店を出る前に、ぽつりと口を動かしていた。微かに音も拾えたから、唇の動きとあわせて考えると、何を言っているのかかろうじて分かる。

ひかり

……わたし、どうすればいいんだろう

ひかりは、何かを抱えているようだった。

第2話 作戦会議、その1

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