休日、本屋へ資料を買いに行くと、唯とばったり会った。

唯

・・・・・・うーん・・・・・・

唯

あ・・・・・・プロデューサー?

プロデューサー

やあ唯。偶然だね。今日は何の本を買いにきたの?

唯

え、えっと・・・・・・いろいろ・・・・・・です

唯は何やら恥ずかしそうに、ちらちらとさっきまで見ていた棚から視線をそらす。

プロデューサー

恋愛ロマンス小説か・・・・・・

唯

く、口に出して言わないでください・・・・・・

どうやら唯は乙女な趣味を知られるのが恥ずかしいらしく、うつむいて内股をもぞもぞさせる。

プロデューサー

恥ずかしくなんてないよ。僕も恋愛小説は好きだな

唯

え・・・・・・ほんとですか?

プロデューサー

うん。どきどきして楽しいよね

唯

はい・・・・・・そうなんです・・・・・・。どきどきする・・・・・・

そして僕は思いつく。

プロデューサー

ねえ唯。ちょっと今日は勉強させてくれないかな?

唯

勉強・・・・・・ですか?

プロデューサー

いまどきの高校生がどんなものに興味があるのか知りたくてさ

プロデューサー

だから一緒に本を見てもいいかな?

唯

あ・・・・・・はい、いいですけど・・・・・・。でもちょっと恥ずかしいかな・・・・・・ううん、いいや

唯

じゃ、じゃあいきますか?

プロデューサー

うん。よかった。ありがとう

そうして、二人で本を見て回ることになった。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・

唯

んー・・・・・・

棚に視線を流しながら、小さく声を漏らして唇に指を当てる唯。どうやら癖らしい。

でもこうしてただ本を探すだけでサマになっている。この歳でこれだけ落ち着いた雰囲気を出せるのはすごい。

唯

・・・・・・なんですか?

プロデューサー

いや、唯はやっぱりいい雰囲気を持ってるなと思って

唯

え・・・・・・

プロデューサー

ただ本を探してるだけで絵になるよ

唯は顔をぼっと紅潮させる。

唯

こ、ここは本屋ですよ?

唯

・・・・・・私じゃなくて本を見てください

プロデューサー

ごめんごめん。で、いま唯はどんな本を探してるの?

唯

バレーの本です

プロデューサー

バレー?

唯

はい。この間体育の授業でバレーをしたんですけど、あんまりうまくいかなくて

唯

みんなに迷惑かけちゃうからコツを勉強しようと思って

プロデューサー

唯は真面目だね・・・・・・

つい感嘆の声が漏れる。

唯

真面目?

プロデューサー

体育の授業でなかなかそこまではしないよ

唯

そう、ですか? でも私は器用じゃないから、人一倍努力しないと

プロデューサー

そうか・・・・・・。唯が成績優秀なわけがわかった気がするよ

唯

べ、別に優秀じゃないですってば・・・・・・

唯

じゃあ、次いっていいですか?

プロデューサー

うん。いこう。何だか楽しくなってきた

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

次に向かったのは女性ファッション誌のコーナーだった。

プロデューサー

ちょっと意外かも

唯

何がですか?

プロデューサー

ほら、唯はいつもシンプルなファッションだからさ。こういう流行りものにも興味あるんだと思って

唯

そうですね・・・・・・見てるだけで楽しいですから

プロデューサー

唯も女の子だもんね

唯

あっ。これ、プロデューサーっ。このコーディネート見てください。かわいくないですか?

プロデューサー

本当だ。かわいいね

唯は興奮気味にファッション誌のページを見せてくる。

唯もこんな風にかわいい洋服を見てテンションをあげるんだなと思うと微笑ましくなるけど、

唯

絶対空子に似合う

プロデューサー

空子か・・・・・・

唯

あっ。これも見てくださいっ

プロデューサー

どれどれ?

唯

これは千乃に似合う・・・・・・

プロデューサー

そうだね・・・・・・

唯

ほかにもいいのないかな・・・・・・?

唯は楽しそうに、一心不乱にページをめくりだす。

プロデューサー

唯は仲間思いだね

唯

はい?

プロデューサー

雑誌で自分よりも仲間に似合う服を探しちゃうなんて。二人のことが好きじゃなきゃできないよ

唯

そんなこと・・・・・・

唯

・・・・・・好きですけど

プロデューサー

でも、唯も似合う服がたくさんあると思うから、自分に似合う服も探してみないの?

唯

探して・・・・・・みることもありますよ?

プロデューサー

どういうのを探すの?

唯

えっと・・・・・・

唯

・・・・・・

それきり黙り込んでしまう。顔が赤くて、何か恥ずかしい想像をしている風だ。

そして呆然としたまま無意識にページをめくり、あるところで止まって、じっと見つめている。

プロデューサー

そのページが気になるの?

僕が横からのぞき込むと、

プロデューサー

ゴ、ゴスロリ・・・・・・!?

しかも目を疑うようなすごいやつだ。フリルも飾りもゴテゴテで、とても唯に似合いそうに思えないけど・・・・・・。

唯

え? ・・・・・・あっ!?

唯

ち、ちがいますちがいますっ!!

我に返った唯は真っ赤になってぶんぶん首を振る。

唯

い、一時の気の迷いだったんです・・・・・・。かわいい服だなって気になって、気づいたら買ってて・・・・・・

プロデューサー

え、買ったんだ?

唯

鏡の前で何度もポーズを決めて・・・・・・でもやっぱり違うなと思って・・・・・・

プロデューサー

着てみたんだ

唯

ああっ!? い、言っちゃった・・・・・・

どんどん墓穴を掘る唯。

唯

で、でももう着てないですよ!? ずっとうちのクローゼットを温めてますっ!

プロデューサー

いや、そんなに焦らなくていいよ。好きなら着てみたらいいんじゃないかな

唯

でも・・・・・・似合わないし・・・・・・

プロデューサー

似合う服を選ぶのもファッションだけど、自分が好きな服を着るのもファッションの楽しみ方だと思うから

プロデューサー

ああ、いや! 別にゴスロリが唯に似合わないって言ってるわけじゃなくて・・・・・・っ!

唯

いいですよ

失言だったと僕があわてて弁解すると、唯は気にすることなく笑ってくれた。

そして上目づかいで、

唯

・・・・・・じゃ、じゃあまた着たら・・・・・・プロデューサー、見てくれますか?

プロデューサー

ああ、もちろん! あんまりかわいくて、みとれちゃうかもね?

唯

そう・・・・・・ですか・・・・・・

唯

へぇ・・・・・・

僕が冗談まじりで言うと、唯は表情を隠すように、くるりと背を向けた。

唯

・・・・・・見とれる・・・・・・

そんなことを呟いて、恥ずかしそうにきゅっと首をすぼめる。

耳と首筋が赤くなっていた。

唯

じゃあ・・・・・・考えときます


ちらりとこちらを振り返ると、その顔も真っ赤だった。

それがいつになるかわからないけど、唯がうれしそうに着るものなら、どんな服でも似合うと思った。