ふたりは焚火を囲んでいる。
様々なライブパフォーマンスを即興で行うふたりは、難なく火を扱える。
良い子の皆はキャンプ場のルールに従おう。

単なる炎に見せかけて、着火剤をふんだんに使った人工的な炎だ。

自然に生まれた現象は時々、人に対して残酷だ。
人の手に制御されるべきだ。

あるいは、人工的に生みだされたものほど、原始的な純粋さを秘めているのかもしれない。

茜

炎を見ないのか


葵は、自分の見ていたスマホの画面を、茜の方に向ける。

明後日のライブの打ち合わせをしたいので
できるだけ早く帰ってきてください

葵

プロデューサーから届いてたよ……

茜

……あいつがどう言おうと
私たちのしたいようにする

葵

……うん

茜には分かっている。
プロデューサーは茜と葵を縛りつけたいとは思っていない。
むしろ、茜と葵を自由にしたいと……

自由を恐れているのは茜と葵(自分たち)であることを、思わずにいられない。

茜

ふん
……だったら 何だっての

葵

茜?

葵

……茜 だいじょうぶだよ

茜

!
急に頭を撫でるな

葵

ごめん ううん
……大丈夫

葵

ここには誰もいないよ

茜

……そうだな

焚火はぱちぱちと火の粉をあげ、薪の上に堂々と輝いている。

ふたりは炎を見つめ、『その時』が来るのを待っている。

葵

加減がわからない……

茜

『軽いやけどで良かったね』と唱えるとうまく焼けるらしい

葵

……てきとうインターネット よくない……

茜

なぜインターネットの情報だと知っているんだ?

葵

……

茜

……

葵

……『軽いやけどで良かったね』?

茜

そろそろ火から出すぞ


とうもろこしは、ひげや皮が真っ黒になっている。

葵

こげてる……かも?

茜

私を見るな 私に聞くな

葵

……はむ

葵

あつっ

茜

……味は?

葵

もぐ…………もぐもぐ……もぐ…………

茜

……私もいただくか


山は、ふたりぶんの静寂を見守っている。
身を寄せあえば雨風を凌ぎ、近すぎては根が絡まって倒れてしまう。
今、丁度いい時間がゆるやかに過ぎていく。

 

~終わり~