燃え盛る炎は、獲物を貪る
獣のように十字架を這い上がり

括(くく)りつけられた
澄音へと迫っていた。

炎の熱が肌を刺すように
じりじりと近づき
焦げた木の匂いが鼻を突く。

澄音の意識は朦朧(もうろう)としていた。

視界の中で揺らめく炎を
見つめるうち
一匹の男の面影が浮かび上がる。


——鷹丸様

唇がかすかに動いた。


しかし、声にはならない。

やがて、ゆっくりと目を閉じ
手の平から梅の花弁が
舞い落ちた



その瞬間——

こ、これは!? え、絵が……!!

突如、周囲の使用猫たちが
騒ぎ始めた。

ざわめきが広がり
怯えたような声が次々と上がる。

の、呪われる……!!

フミは眉をひそめ
騒ぎの方へ向かう。

フミ

何事ですか!?

この翠緑の猫娘が……泣いております!

フミ

なに……?

フミが絵画に目を向けると
確かにその瞳から大粒の涙が
零れ落ちていた。

まるで
儀式を見守る神の代弁者のように。

フミ

ば、バカな……!

言葉を失うフミ。その時——




ザアアアアアアア——ッ!!

まるで天が怒りを
露わにするかのように
大粒の雨が降り注いだ。

激しい雨は容赦なく火を叩き
薪を湿らせ、燃え上がる炎を
飲み込んでいく。


フミは空を仰いだ。

フミ

……雨……だと!?

フミはすぐに八千代のもとへ
駆け寄ると

低く静かな声で進言した。

フミ

八千代様、どうか一旦、教会の中へお入りください

八千代は燃え盛る火が
突然の雨に打たれ
勢いを失っていく様子を
見つめながら
訝(いぶか)しげに眉をひそめた。

八千代

なぜ急に雨が?

フミ

……通り雨でございます。すぐに止むでしょう

八千代は少し考え込むように
目を細めたが、やがて静かに頷いた。

八千代

わかった

そう言い残し
濡れた裾を気にしながら
ゆっくりと教会の扉へ向かっていった。







まるで奇跡のように降りしきる
雨に使用猫たちはうろたえ
松明を持つ手を震わせた。

フミ

火を絶やすな! 油をもっと注げ!

フミは必死に命じるが
雨の勢いはそれを嘲笑うかの
ように、ますます激しさを増していく。

フミ

くそ……っ!!

怒りと焦燥に歯噛みするフミ



その時——

ずるっ……ずるっ……

泥を踏みしめながら
何者かがこちらへと歩み寄ってくる。

フミ

……お前は!?

闇の中、雨に濡れた影が
ゆっくりと姿を現す


それは——鷹丸だった。

ぼろぼろになった
衣服が肌に張り付き

足を引きずりながらもなお
まっすぐにこちらへ向かってくる。

フミが息を呑む。

血と泥に塗れたその姿は
まるで地獄から蘇った
亡者のように見えた。

フミの胸がざわめく。

緊迫した空気が張り詰める。


奇跡か、それとも呪いか

—夜明け前の教会に

運命が揺らぎ始めた。