依然、森の中を移動し続ける勇者たち一行。

勇者

……。

姫

……。

魔法使い

……。

騎士

……。

剣闘士

zzz

一行は狼の群れに囲まれているのであった。

勇者

いやあ…これはちょっと予想外だな。

魔法使い

6,7…確認できるだけでも15はいそうだね。

姫

どうするんですか!このままじゃ全員食べられちゃいますよ!

魔法使い

誰かさんが道を覚えてくれなかったからここを通ったんだけど。

姫

うぐっ。

騎士

……。

姫

そ、そんなに睨まないでください。

勇者

しかしえらく気がたってる感じがするな。なんでだ。

姫

さっき私たちが狼を食べたからでは。

姫にしては珍しく、状況理解が早かった。

勇者

さすがに全部相手をするとなると疲れるぞ。

姫

疲れるくらいで済むなら倒してください!
このままじゃ全滅ですよ!

魔法使い

大丈夫。

魔法使い

あたしにいい考えがある。

世界の終わりを見たかのように取り乱す姫を、魔法使いは冷静に諭した。

姫

どんな取り乱し方ですかそれは!

勇者

なんだ魔法使い、作戦か?

魔法使い

んー、そんな感じ。

魔法使い

ひとまずあたしに任せてもらっていい?

コクリとうなずく一行。
コクリコクリと船を漕ぐ剣闘士。

魔法使いは一歩前に出ると狼に相対した。

魔法使い

森の狼さん。

がるっ。

魔法使いはすぅっと息を吸い込むと高らかにこう言った。

魔法使い

狼は全部姫が食べました!私たちはなにも知りません!

姫

なんてこと言うんですか!

がるぁ!

姫

ひい。

魔法使いの作戦は見事にはまり、狼たちの視線と殺気はすべて姫に向けられた。

姫

私向けてどうするんですか!

勇者

しかし、今ので姫のほうを見たってことは、もしかして人の言葉がわかるのか?

剣闘士

ここはわたしに任せて。

勇者

おお、剣闘士。お前いつのまに起きたんだ。

いつの間にか覚醒していた剣闘士は姫に向けて殺気を放っている狼たちに近づいて行った。

姫

あ、あぶないですよ。

がるぁ!

姫

ひいいい。

剣闘士

姫、ちょっと黙っててくれ。こいつらと話してみっから。

剣闘士は数匹の狼の前に立つと、両手を広げて話し始めた。

剣闘士

わたしらに戦う気はない。どうか気を静めてくれないか。

がるぁ!

剣闘士

お前らの仲間を殺してしまったことは悪かった。

がるるるる。

剣闘士

しかし、仕方ないことだったんだ。

がるる。

剣闘士

わたしたちも食べなければ生きていけない。お前らがウサギやネズミを食べることと一緒だ。

……。

剣闘士

もしそれでもわたしたちを許せないのなら、かかってくるがいい!全力を持って相手してやる!

……。

お主のような人間がまだいるのだな。

姫

喋った!?

黙れ小娘!

姫

ひぃい。

いちいち口うるさい姫を一喝し、狼は話し始めた。

他を食し、そしてそれ血肉に変え生きていく。

命は巡り巡っていくもの。

殺され、食された。それは自然の摂理。

あやつが死んだのも定めだったのだろう。

剣闘士

わかってくれるか。

お主ら、森を抜けたいのか。

剣闘士

ああ、その先の村まで行きたい。

お主のような人間がいたことに免じ、この森では何もしない。

村は向こうの方角だ、そう遠くないから3日もあれば着くだろう。

剣闘士

ありがとな!

モーゼのように左右に分かれた狼たちの間を勇者たち一行は進んでいった。

がるぁ!

姫

ひい!

姫

なんで私だけこんなに威嚇されるんですか。

狼の群れと別れてしばらく、森を進みながら勇者は剣闘士に話しかけた。

勇者

剣闘士、お前どうして狼たちが会話できるとわかったんだ?

剣闘士

ん?そんなの知らなかったぞ。

姫

知らないのに狼の前であんなこと話してたんですか。

剣闘士

なんとなく頑張れば伝わると思ったからな。

姫

雑すぎる…。

小姑のように細かいことも嫌味な風に指摘する姫には、剣闘士の寛容さは伝わらなかったようだ。

姫

嫌味な風になんか言ってません!

私はなにも知らない。

姫

あと、少しいい話してましたけど、あの狼を率先して食べようと言ったのって剣闘士様ですよね。

剣闘士

殺しちまったんだから自分らでどうにかするのが筋だろ。何言ってんだ。

姫

え?私がおかしなこと言ってます?

勇者

ま、それはいいとして。狼の話だと3日ほどだったか。

勇者

みんな、頑張ってこの森抜けるぞ!

姫

おー

剣闘士

おっしゃー!

魔法使い

はーい

騎士

……

かくして、剣闘士の動物と対話するという特技を生かしてピンチも乗り切り、勇者たち一行の旅は続くのであった。