郵便局員A

俺は一介の郵便局員だ。

郵便局員A

この物語に出てくる解説は
すべて個人の見解であり、
日本郵便(株)様の
公式見解ではないということを
覚えておいてくれ

 
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●

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客

あのー……

郵便局員A

いらっしゃいませ!
ご用件をお伺いします

客

すいません、
この手紙を出したいんですけど

郵便局員A

封が開いておりますが

客

とじてませんからね

郵便局員A

封緘(ふうかん)もせずに
出すと……!?

客

フーカンってなんですか?

郵便局員A

封緘とは、手紙や文書などの
封をとじることです。
または、そのとじた物を指します

客

封緘をしないで出したことの
何が駄目なの?

郵便局員A

封をしなければ、
中身が外へ飛び出す……。
そんなデンジャーかつ
常識的な光景を
想像したことはありませんか?

客

思いもよりませんでした

郵便局員A

いや思えよ

客

じゃあお前が閉じろよ

郵便局員A

ここに一本のア○ビックヤマトが有る。
好きに使え

客

商品名はいいから普通に
糊(のり)って言えよ。
ていうか、封を閉じるくらい局員さんが
やってくれないわけ?

郵便局員A

封緘には責任が伴う!
それぐらい知っておけ!

客

責任ってなんだよ。
ただ閉じるだけでしょ

郵便局員A

俺がこのア○ビックヤマトを駆使し、
華麗に封をしてしまうとする。
すると、この俺が封筒の中身を確認し、
問題なく送れると見なしたのと
同義になってしまう

郵便局員A

この意味がわかるか!?

客

大体わかったけど、
俺、さっき指を怪我しちゃったんだわ。
だからうまく封をできなくて
困ってて……

郵便局員A

それを先に言え!
そういう理由ならば、
この俺が代わりに閉じてやる!

客

ツンデレなの!?
ていうか責任はどうした!?

郵便局員A

この俺が全責任を持つ!

郵便局員B

いや全責任を持つのは
おかしいでしょ

郵便局員A

いくら先輩だからと言って、
頭を叩くな貴様!

郵便局員B

あなたも後輩なら
敬語を使いなさいよ

郵便局員B

それはそうとお客様、
大変失礼しました

客

いえ。
ようやくつっこむ人が
出てきて安心しました

郵便局員B

お客様が怪我などの
何らかの理由で封緘を
することが難しい場合、
郵便局員が代わりに
封緘をいたします

郵便局員B

ただしその場合、
お客様から委任していただいたとして、
必ず封緘のご了承を得ております。
私どもが代わりに封を閉じて
よろしいでしょうか?

客

別にいいけど、
なんでそんなに慎重に
確認するわけ?

郵便局員A

実は過去に、それはそれは
悲しい出来事があったんだ……。
どうだ? 聞きたいか?

客

いや別にいい

郵便局員A

あれは俺が、
郵便局に入ったばかりの頃の話だ

客

別にいいって言ってんのに
話し始めてんじゃねーよ

郵便局員A

お前のように、
封が開いている郵便物を
差し出したお客様がいたんだ

郵便局員A

あの時の俺は、
それを親切心で糊で閉じた。
お客様は『出す』と
言ったのだから、
もう未練は無いのだろうと思ってな

郵便局員A

しかし、お客様は怒り出したのだ。
『郵便局員が勝手に閉じた!
まだ入れる物が有ったのに!』
……とな

客

ははは、バカだなあそいつ

郵便局員A

いやお前も同じレベルだろ

郵便局員B

まあ、我々も人間ですし、
お客様も人間です。
一度出すと心に決めた物で
あっても、
『本当に閉じちゃってもいいの?』
と確認すると、大切なことを
思い出すきっかけにもなります

郵便局員B

単純に責任を問うという事だけでなく、
お互いに気持ちよく過ごすためにも
コミュニケーションは大切ですよね

郵便局員A

我々は同じ星に住む人間だ。
悪い政治家のように責任を他者に
なすり付け合うのではなく、
生きとし生ける者すべてを
慈しむことが肝要だ

郵便局員B

綺麗にまとめたのに
なぜ論点を大幅にずらすのかしら

客

そんなことはいいから早く
手紙を出させてくれ

郵便局員A

むっ。
では今一度聞くが、
俺が封を閉じていいんだな?

客

おねぎーしゃっす!
※お願いしますの意

郵便局員A

見よ!
この美しい封緘を!!

郵便局員B

あなた、
お客様への態度は悪いけど
仕事はいつも丁寧よね

郵便局員A

当然だ!

郵便局員B

いや当然じゃないでしょ。
態度を改めなさいよ

客

それじゃ、出しといてください。
おねぎーしゃっす!
※お願いしますの意

郵便局員A

待つんだ!

客

まだ何かあんの?

郵便局員A

まだ郵便料金を貰っていない

客

忘れてたわ。
で、いくら?

郵便局員A

俺との楽しい語らい料込みで、
一万円だ

郵便局員B

あなたのトークに
そこまでの価値は無いわ

客

むしろこっちが
話を聞いてあげた代金を
請求したい

郵便局員A

ふ、二人でフルボッコにするな。
わかった、郵便料金だけ
請求すればいいんだな?

郵便局員A

定形サイズ25グラム以内で、
84円だ。
※令和3年現在の料金です

客

はーい、84円ね

チャリ…

郵便局員A

あーがとーっ!
ざっしたーっ!
※ありがとうございましたの意

郵便局員B

ありがとうございました!
※感謝の意

 
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●

 
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●



──数時間後。

客

すいません。
これ出したいんですけど

郵便局員A

いらっしゃいま……
また貴様か

客

客に対してその言い方はなんだ。
今度はちゃんと封をしてきたよ

郵便局員A

指の怪我治るのはやっ。
どれどれ、今度は
定形外郵便ですか。
……むっ!?

郵便局員A

こ、これは……!
あて先の住所がまったく
書かれていないではないか!

客

駄目なの?

郵便局員A

駄目に決まってるだろ!
どうやって届けるんだ!

客

中に住所を書いた紙が入ってるし

郵便局員A

ば、バカな……。
封筒の中を透視しろというのか?
郵便配達員はエスパーではないぞ!

客

だってこれ、俺が通ってる
専門学校に提出するやつ
なんだけど、
中の書類に住所を書いて
下さいって言われたよ

郵便局員A

それは郵送上の話ではなく、
専門学校の事務処理で
使うだけの話だろう

客

はあ

郵便局員A

よく考えても見てくれ。
仮にお前が
郵便配達員だったとする。
住所が書かれていないこの封筒を、
どうやって届けるというんだ?

客

封筒を開けて、
中の住所を見る

郵便局員A

な・ん・で!
配達員が封筒を開けるんだ!
そもそも中に住所が
書かれてるなんて
わからないだろう!

客

じゃあ配達員さんに、
中に住所が有るって伝えてよ

郵便局員A

郵便の窓口と、
配達員が働いてる場所は違うの!!
すぐ伝えられる距離じゃないの!

客

電話で伝えればいいじゃん

郵便局員A

一日に何百通もの郵便物を
処理している配達員に、
一通一通の詳細を伝えるのは無理ー!!

客

あっ。
泡吹いて卒倒した

郵便局員B

代わりに私がご説明します

客

倒れた人は放置?

郵便局員B

『信書の秘密』に基づき、
郵便局員が郵便物の内容を
確認することはありません。
※内容証明、事故などの特例は除く

郵便局員B

それに、お客様が封をした物を
みだりに私たちが開けることがあっては
封緘の意味がありませんよね

客

そうですか。
えーと……
つまり……?

郵便局員B

封筒の表面にあて先の住所を
書いてください

客

おかのした!
※わかりましたの意

客

書きました。
じゃ、これ出しますね

郵便局員B

普通郵便でよろしいでしょうか?

客

はい

郵便局員B

定形外100グラム以内で、
140円です。
※令和3年現在の料金です

チャリ…

客

はい、140円ね。
おねぎーしゃっす!
※お願いしますの意

郵便局員B

お預かりします。
ありがとうございました

客

それにしても、
郵便出すのってな~んか
面倒くさいですね

郵便局員B

お手数をおかけします。
はっきり言って
郵便を引き受けるこちらも
面倒くさいです

客

は?

郵便局員B

あ、失礼。
今のは忘れてください

客

はい、忘れました

郵便局員B

お客様には複雑な郵便の
ルールを守っていただき、
お手数をおかけします

郵便局員B

ですがお客様にルールを守って
いただくというのは、
私どもの都合でわがままを
言っているわけではないのです

客

郵便局の人たちが
わがままなだけかと思ってた

郵便局員B

郵便のルールに
反していることを知りながら
郵便物をお引き受けしてしまうと、
正しく郵便物を
お届けできないなど、
お客様にご迷惑をおかけして
しまう事になります

郵便局員B

円滑に事務処理を進める事で、
郵便をより早く安全に
お届けできる……
それがルールを
守っていただくことの
一番の目的です

客

なるほど。
郵便局のために
やってるようでいて、
つまりは自分のために
ルールを守るんですね

郵便局員B

そういうことですね。
ご理解いただけて嬉しいです

客

これからも郵便を出しにくると
思うけど、よろしくね

郵便局員B

ぜひお越しください。
お待ちしております

郵便局員A

はっ!! 5時だ!
郵便局を閉めるぞ!

郵便局員B

ビックリするから
急に起きないでくれる?

1通目 普通郵便を出そう・その1

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