狐

やっぱりお前は・・・
狸だったか

狸

あれ、もうばれちゃいましたか

狐

変装が下手なんだよ

狸

下手!?
私の変装が!?

狐

大丈夫だ。
あいつは気づいてねえよ

狸

そう、まあいいや
行かないの?

狐はドアの前で立ち止まって
一向に中に入ろうとしない。

狐

中

狸

中?

狐

あれは・・・

狸

兎ですか

兎が一匹、きょろきょろと辺りを見回し
何かを警戒しているかのような素振りだ。

狐

なんだ、あいつかよ

狸

知り合いなんですか?

狐

俺の店の常連

狸

兎が、ですか?

狐

おとぎの世界にいちゃ
つまらないだろ。

狸

いいじゃないですか、
一度は西洋の世界に
行ってみたいですよ

狐

兎は追いかけられて
ばっかりだろ

狸

例のアリス様ですか

狐

やっぱり話を聞いていたのか

ある件のせいで、俺の店の客は半分以上減少した。

狸

すみません、子供に
化けていただけなので

狐

だよなあ

狸

どうします?
兎さんは逃げ足が速そうですし

狐

出禁にでもするぞ、とでも
言えば戻ってくる。

兎

うむ、それは困りますな

いつの間にか後ろに兎は居て、
話を聞いていたようだ。

足音も何もしなかったため
背後に全く気付かなかった。

狐

戻らなくていいのか?

兎

戻った方がいいんでしょうけど

戻ったら戻ったで
ヤジが飛ぶだけです。
僕の無力さに嘆くばかりです

狐

戻らなかったら世界は壊れる。

もしかしたら
なくなるかもしれない。

・・・管理人として
それは避けたいんだよ

兎

管理人として、ですか。
あなたの仕事の妨害をする訳にも
行きませんですしね。

一瞬、間を置いて言葉を躊躇った。

ゆっくり息を吸うと、彼女は眉を顰めた。

兎

それならばアリス様を
見つけていただきたい。

最悪の場合、誘拐されている
場合がある。

狐

誘拐?

兎

可能性があるだけです。
兎に角、僕は先を急ぎます。

順序を追って説明しておきます
でも、女王様はお怒りでしょうな

狐

チッ・・・。
わざと狙って言ってるだろ

兎

営業妨害はしませんよ

狐

毎回、気絶するまでも
やってるくせに

兎

今回はそれだけじゃあ、
済まない気がしますけどね

狐

ほれよ、必ず返せよ

兎に渡したのは時計だった。
勿論、ただの時計ではない。

凄い威力を持ち、取り扱い方には要注意だ。

兎

シンデレラのところに時計が
入ってしまった時は
どうしようかと思いましたよ

狐

それは禁句だ。
下手に声に出すんじゃねえ

兎

おっと・・・
そうでしたね。

にっこりと狐を見て微笑むと
今度は狸を見て、にっこり笑った。

兎

あなたは・・・?

狸

それは、お互いのために
やめません?

兎

そうですねえ・・・
名前も知られてはならないですしね

狸

そうねえ、物騒な世の中ですから

・・・それ以上話したら
初対面でも手加減しないよ?

兎

ごめんね?
不快な思いをさせるつもりは
なかったんだよ?

じゃあね、狸さん・・・

狸

なんで・・・!

兎

お互いのために
やめておきましょう?

彼女らはお互いに睨み合い、
兎は社まで向かうようだ。

狸

兎ねえ・・・

狸は静かに嘲笑した。